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ID:INVADEDの感想(ネタバレありの世界)

思い出した…俺は穢井戸(けがれいど)。暇人だ。俺は視聴したアニメ、「ID:INVADED」の感想を書かねばならない。

 


ID:INVADED イド:インヴェイデッド Official Trailer 02 / OP : Sou “ミスターフィクサー MR FIXER”

連続殺人鬼の殺意から作られた世界(イド)に入って謎を解く名探偵、黒幕の連続殺人鬼メーカー…耳にしただけで最高と分かる設定だ。舞城のことはよく知らんが、『ザ・セル』『デジャヴ』『ミッション:8ミニッツ』『インセプション』『ハンニバル(TVドラマ)』みたいな作品を好む俺にはド直球。良いとこ取りにも程がある。

でもそんなSFミステリー(舞城さんはミステリって表記に拘りがあるらしい)な部分よりも素晴らしいものがある。それは死体だ。イドが形成されるとデフォルトで配置されるカエルちゃんという名の美少女の死体だ。黒髪ロングで緑目で白ワンピースだ。名前の由来は井の中の蛙などからきているのだろう。1話を観た時に一番心を惹かれたのは間違いなくカエルちゃんの刺殺体だった。あと生脚。

後に出てくるバラバラのカエルちゃんも、銃で胸を撃たれたカエルちゃんも、浮いてるカエルちゃんも、大量出血で肌が暗めになったカエルちゃんも、落雷が直撃したカエルちゃんも、砂漠で死んでるカエルちゃんも素晴らしかった。焼死体だけは残念だったよ。

俺のPCにカエルちゃん専用フォルダがあるのはここだけのヒミツ。f:id:Imagege:20200415003820p:plain

1話は視聴者を置き去りにする勢いの情報量が良く、掴みから完璧。挿入歌が流れる組み立てシーンは超かっこいい。カエルちゃんの生脚だけが見えてる画とか、本堂町視点でワクムスビを見せてるけど本堂町の脚に目が行ってしまうカットとか、腕がバラける時の音がマジで好き。まず脚フェチはここで視聴継続を決めるだろう。別にこれから脚フェチ向けの画があるわけじゃないんだけども。

2話はイド内の本堂町がとてもかわいい。酒井戸もちょっとかわいい。全話観た後に観直すと、終盤に繋がる言葉が多かったのだと気付けてビックリですよ。

3話は嵐とかドグマって言葉がサラッと出てくるし、かつて仕事にかまけて家族を救えなかった鳴瓢の後悔が判明するのも重要で、カエルちゃんが出現してから死ぬまでに少し時間があるという情報も最終話のあるシーンに効いてくる。花火師を自殺に誘導するシーンは後ろに家族の写真を映していて非常に背徳的だ。花火師は社会風刺系アーティストを気取っていたけど、幼稚な破壊願望や優越感を満たしたがっている自分の薄っぺらさを必死に誤魔化していたって感じの、1話完結回に相応しい小物であった。

4話はカエルちゃんがナンセンスな焼死体になっていて残念ではあるが、穴井戸が花火師のイドに入ったアバンで良質なカエルちゃん要素を摂取できるので充分だろう。ただ他に入ったらしい6つのイドも見たかったな。模倣犯のイドはハデだったし鳴瓢と酒井戸の魅力が3倍くらい増すので最高ではあった。所長にどうせ殺人鬼やろなんて扱われた後に酒井戸の優しさとかっこよさを全力で見せる流れがたまらん。でも娘と重なるような少女を助けられず、犯人の動機も浅ましくて胸クソ悪さが残る。最後の走る本堂町はかわいい。

5話は一部で人気の高い墓堀り編の前半で、キッスで動揺する本堂町がバカかわいいだけでなく、いきなり始まる落下はイドパートの導入の中でも一番イケてると思う。恋に堕ちてるみたいなものだろうか。重力の基準が意味不明だったのは気になる。

6話は5話のかわいさを忘れさせる容赦ない本堂町にゾクゾクするし、電車のイド内が画的に最高。酒井戸がおせっかいおじさんみたいな感じなのもおもしろい。どこにも辿り着かない堂々巡りな井波のイドに浸ってしまって涙を流す酒井戸の姿は最終話まで覚えておくべきシーンだ。百貴さんが「俺自身もこの世界をこのまま眺めていたいってのはおかしいだろうか?」とか言っていたのは、ぶっちゃけ可笑しかったな。俺も好きですよ…ああいうの。

7話はついに鳴瓢のイドが舞台となり、初っ端からスーツ姿で死んでいる鳴瓢が切なかった。綾子も椋も鳴瓢に気付くことは無かったんだよな。雷は復讐心を表していると考えるのがしっくりくる。聖井戸のキャラデザはある意味変態的でめっちゃ良い。ただ事件ではなかったし、聖井戸自身や推理にも面白味が薄い回だった。

8話は穴井戸と酒井戸の妙に仲のいいやりとりとかキャラ萌えが楽しかったって印象。穴井戸は知識は大したことないけど名探偵であることは確かという謎の頼もしさや、人を指さして笑う仕草も好き。富久田の「普通一冊のミステリに名探偵2人は両立しないわけ」なんてセリフがあったが、本作はどう考えても普通じゃないし、『名探偵コナン』の劇場版みたいに名探偵が何人いても楽しいからOKって感じになっていましたね。

そして9話は酒井戸が過去の鳴瓢としてイドの中のイドに入り、家族の悲劇を回避しようと奮闘するだけでなく、満を持して飛鳥井木記が登場する最高の回なのだ。もう2020冬アニメのベストガールは彼女以外ありえないなと確信したよね(嘘、ナナニジの斎藤ニコルと迷った)。本堂町も東郷さんも凄く良いけど飛鳥井さんが圧倒的すぎる。常にグロッキーでかわいいし、夢の中で殺人鬼の殺意を理不尽に押し付けられ続ける体質が本当に酷くてメチャクチャ興奮した。描写的には殺人鬼たちが絶頂を伴ってないように見えるんだけど、実際はあんなことやこんなこともされてるんじゃないのかと…想像を膨らませて怒りと哀しみと興奮で頭がグチャグチャになってしまいます。本当にごめんなさい。

綾子の自殺も良い絵であった。俺は真面目に観ていたファンや鳴瓢に殴られても仕方がないと思う。

そして10話では「顔削ぎ」「舌抜き」「股裂き」「腕捥ぎ」と、俺をワクワクさせるミラクルワードがたくさん飛び出したんだけど、どいつもこいつも出オチになったのは少し残念でしたね。でも鳴瓢が自殺に追い込んでいた奴らが全員分かった。世間の10話の評価は絶賛の声ばかりだった印象があるけど、俺としては非常に惜しいという気持ち。評判の良い回想の映像は確かに素晴らしかったが、椋の死体をわざわざ二度映したカッティングに疑問はあるし、挿入歌のセンスもイマイチかつ、五月蠅く感じて泣けなかった。失ったはずだった警察官とか夫とか父親としての人生をイドの中で1年以上も経験することができたり、イドである事実を突きつけられても必死に否定する哀しさとか、やってることは超好みだったから余計に悔しい。「生きてきたんだ!」ってセリフは本当にグッときた。鳴瓢が「お前を忘れてたよ」と富久田を殺そうとしていたのに、砂漠のイドに戻った酒井戸が「はは…変な奴」って穴井戸に笑っていたのはニヤニヤしちゃうね。流砂の中にあった鳴瓢の死体はまさに地獄から抜け出せなかった者の成れの果てだ。

ラストの「ドグマに落ちます!」「これがイド嵐…」ってのは3話を覚えていないと突然の謎ワード連発に思えて笑いそうになってしまうな(初見時は覚えてなかったので笑っちゃった)。

11話では本堂町が、空いた穴も自分の一部で空いているのが本当の自分的なことを語っており、たぶんそれが本堂町小春というキャラの答えになるんだろう。何かが欠けているとか未完成の者が答えを探す物語だったのかなと思う。本堂町は穴が空く前からネジが飛んでいたっぽいので(イドもずっと荒野だ)誰よりも掴めないところがあるんだけど、実は穴による解放に感謝しているのかもしれない。

富久田は穴そのものに執着していたわけではないし、衝動的に穴を空けていたわけでもない理性的な殺人鬼だったからジョン・ウォーカーの安っぽい誘いにも乗らなかったとのことで、殺人鬼とはいえ一応かっこよかったな。富久田のイドのジョンウォーカーがワンパンで倒せるくらい弱かった事にここで納得できた。

12話は本性を現した局長がイド内でめちゃくちゃ調子に乗ったりするけど、ここでも富久田がかっこよすぎて全てを持っていくので本当にズルい。酒井戸が鳴瓢であることを思い出してイドの中の家族と目が合うのも良い。挿入歌の使い方は一番良い回かも。本堂町は頭に穴が空いたことで、欠けていたりバラバラになったモノの完成された形が見えてしまう力を手に入れたらしく(パズルゲームとかやれるのかな?)(廃墟とかで床の綻びに気づかず落ちてそう)、それを聞いた瀕死の富久田は、バラバラだった自分のイドの世界も君の中で完成する的なことを言って望んでいた通りに死んでしまった。彼の心理は正直よく分かっていないが、本堂町が自分の穴を受け入れたように、自分が気付いていなかったバラバラの世界を認めて(もらって)穴を埋めたかったのかもしれない。本堂町の力が都合良すぎるけどロマンチックな関係に思えてくる。富久田の好きな「3」って欠けてる感が凄くて、本堂町は「8」が好きそうだな~とも思ったり。

数字に悩んで頭に穴を空けた設定の元ネタはダーレン・アロノフスキーの『π』なのかも。

井波は外道だがイイ女だった。7話で富久田と鳴瓢に引いていた瞬間がチャームポイント。ジョンウォーカーに刺されるシーンは最高としか言いようがない。もちろん絵的にだ。ジョンウォーカーに刺されることが数田の殺意=愛が届いたみたいに捉えることも可能かもしれないが、それだったら井波の最後を哀しげに見せる必要は無いだろう。彼女は結局、手を伸ばそうとするだけで終わったのだ。

的外れかもしれないが、井波は数田が好きだけど本質的には恋に恋をしているタイプで、届かないまま終わったああいうシチュエーションには割とアリだと思って現実には戻ってこないんじゃないかと思う。大量の電車が同じ方向に走ってるイドが井波の更新されたイドだと一部では言われているけど、最後まで数田を求めた行動は一貫していたし、あれほどの変化はさすがに極端すぎて違うんじゃないのか?

 

※追記

BD BOX 上巻の特典小説を読んだよ。

井波さんは元カレと肉体関係を持っていたり、数田に何度か暴力を振るわれていたり、墓掘り動画を観ながら自分を慰めまくっていたと分かっただけでも最高でした。

アニメ本編は殺人鬼の衝動から性欲を排除したような描き方になっていたと思うけど、井波さんの心の内はオ〇ニーやセッ〇スでいっぱいだったようです。恋愛も自慰みたいなものだったんじゃないか?数田の穴に突っ込んで殺したがっているうえに殺されたいとも思っていた辺りが、めんどくさいオタクみたいだなと少し共感。性癖が歪んで記憶も歪んで支離滅裂。最後の文が中学生っぽくてかわいかった。

 

最終13話は開幕からイドが超イケてる。真っ赤な水に巨大な赤子とサメがいるとか、これこそ推理の舞台になって欲しかった。この作品にはずっと猟奇的なイドを求めていたんだよな。

そしていろいろあって局長はイドの中のイドで捕まりましたとさ(雑)。少しモヤモヤするけど局長にとってはかなり屈辱的な最後なんだろう。そこでは富久田も井波も生きているわけだが、良い事なのかどうか複雑だ。

「殺人鬼のルールは自分自身にも同じ形で向かうんだよなぁ…」と、この作品独自?っぽい殺人鬼論は意味があるんだろうけど拍子抜けにも感じる。今更だが他人を殺人犯にしたり自分に返ってくる辺りに黒沢清の『CURE』っぽさがあるなと。あれも解放を描いているところがあると俺は解釈している。

Bパートは百貴のターンになって特殊スーツを着た百貴が飛鳥井さんを説得するわけだが、百貴に気付いた飛鳥井さんがペタペタ寄ってきたのがめっちゃかわいかったし、銃で死のうとするのもかわいかったね。飛鳥井さんの謎スーツは局長の趣味なのかどうか気になるんだよな。まぁとにかく、百貴は警察官として、酒井戸は名探偵として彼女を救おうとしている姿がかっこよすぎるんですよ。飛鳥井さんが水の中へ戻る前に、今までのような殺意なんかじゃない酒井戸の純粋な想いから見えたウユニ塩湖なシーンは美しすぎた。

まだ救われないのは辛いけど、囚われ続けるのはヒロインとして完璧なので俺は大好きですよ…。俺は偏執に囚われてしまったらしい。

でも百貴は最後までパッとしない気がするので、もう少し日常的な側面の掘り下げなどで上司感を薄めたり、鳴瓢とは対比的な現実側の主人公みたいな見せ方を強くしてくれていたら、最後の活躍に唐突さを感じないで済んだかもしれない。

本堂町が富久田の死に「涙の一粒くらいでこの人には丁度だと思います」と言っていたのはかなり良かった。アイツはそういう扱いでいいんだよな。鳴瓢も「泣ける相手がいるうちに泣いておけ」ですからね。あの3人の人殺しの関係性は本当に奇妙で、美しいほどに不完全。

鳴瓢はイドがそうなったように雷が去って空っぽになったから、酒井戸としてカエルちゃんを助けようとすることが唯一の役割になって、飛鳥井さんもせめて誰かの役に立てるようにと救われることを信じながらカエルちゃんとして殺され続けるのだ。酒井戸は名探偵だが言ってしまえば名探偵でしかない。犠牲者として出現するカエルちゃんがいなければ彼の存在に意味はない。助けたいという意志すら思い出せない。そこが魅力でもあるんだけど、役割を実行するだけの彼らがそんな残酷な属性から解放されて顔を合わせられたら、それは間違いなく素晴らしいことであるはずなんだ。カエルちゃんが死ななくて済むようになったら鳴瓢は今度こそ家に帰るのだろう。ついでに飛鳥井さんの親代わりみたいな存在として一緒に暮らす事になったら最高だろうな。一刻も早く救われることを願っていますよ。いやマジで…。

 

一応ビミョーに感じたところはある。

推理モノだけど突然どんでん返しが起こってもおかしくない作風だから、どうせ後で明かされるんだろと冷静になっちゃって、観ている間は考える気にならない。難しいというよりはめんどくさい。結末から作っているような感覚が強かった。毎週1話ずつ観ていくよりも一気見したほうが良いと思う。犯罪心理や世界設定を曖昧に描いてもファンが考えてくれるだろ的なやつに嵌められてる感覚があるっちゃあるし、過剰な解釈に至るしかない部分が多い。

それでもやっぱり、時間を使って考える価値は十分にあると思える作品でした。そもそもメッセージ性なんか分からなくても、すげーエンタメやってるので楽しめちゃうのだ。カエルちゃんの存在だけで満点の傑作。

全話観た後に時間を空けてからまた観ると情報がスッと入ってくると思う。たぶん。

 

続編は無くてもいい終わり方だったけど、既に続編扱いの漫画版が存在するので俺はそちらも追いかけていくつもりだ。カエルちゃんの死体がやっぱり良いのでね。

 

OPは歌い手感が強いなとは思うけどめっちゃ聴いちゃう。

EDはなぜかMIYAVIが去年に出したアルバムの一曲だが、めちゃくちゃカッコいい。曲のクオリティが圧倒的。

 

BD特典のオーコメでは、ここの作画やだな〜とかめんどくさかったって言いまくっててウケる。富久田のイドの中でギャルゲーやってるやつがいるとか、富久田は「たこや」がどんだけ印象に残ってるんだよとか、実況しがいのある細かいツッコミどころも多いんだよなw

 

これで終わるけど何か思いついたら追記する。

アニメがある、インターネットがある、そこで自分が何者か思い出せ。何者でもない人にも何かしら意味があるはずだ。たぶん!